2013-03-28 羊 quote book ただ、すでに兆をこえる羊のうちのたった一頭が、私の未成年の日に行方不明にな ったことが心にかかり、その数えまちがいの罪について糺そうとするときに、 なぜだか私は、一人の女のことを思い出さないわけにはいかないのだ。 たった一夜だけ、私と一緒に幻の羊を数えたことのある恵子よ。 いまでも、高架線の下のアパートで 終電車の通ったあとで、孤独な数字を思い出しているか? 死は、一兆七千三百十万四千頭目の羊! (寺山修司著『青少年のための自殺学入門』pp.22-23)