All Tomorrow’s Girls

It's hard to stay mad, when there's so much beauty in the world. ━American Beauty

フランシス・ベーコン展


《ジョージ・ダイアの三習作》
1969年ルイジアナ近代美術館蔵
Donation: The New Carlsberg Foundation
 ⓒ The Estate of Francis Bacon. All rights reserved. DACS 2012


会期終了まであと数日となった本日、東京国立近代美術館で開催された「フランシス・ベーコン展」に行ってきた。

私が出かけたのは午後だったが、噂どおり混み合っていた。そして、既に観た方のtwitterで知ってはいたが、「ガラス」についての注意事項が、何度も繰り返し掲示されていたことが印象的だった。ベーコンの絵は本人の希望で、全てガラスの額縁に入れられている。ガラスは「観る人と作品を隔てる役割を果たしている」という作家の意思に従って展示しているので、多少観づらくとも我慢してくださいということらしい。確かに、絵の具の跡をみようと作品に近づくと、ガラスに自分の姿が映り込んでしまい、後ろで見ている人はイラッとするかもとちょっと思った。


私がフランシス・ベーコンを最初に知ったのは、映画「ラストタンゴ・イン・パリ」を観た時だった。観たのはレンタルビデオで、多分20代の頃。冒頭のタイトルクレジットに、ベーコンの肖像画が使われていた。イタリアの映画監督ベルナルド・ベルトルッチのこの映画は、公開当時、性的描写があまりにも過激なため本国で上映禁止処分を受けたとか、センセーショナルな話題が先行していたらしい。まあ、そうだろうなあ。
けれども、それから20年近くを経て、町山智浩による「映画塾」の説明で、あの映画に登場する宗教やマーロン・ブランドの台詞は、徹底的にベーコンの絵のイメージを基にしていることを知った。*1


ベーコンは正式な美術教育を受けたことがなく、画家に師事したこともなく、ほぼ独学で油絵を習得している。作品は大部分が激しくデフォルメされ、生々しく奇怪であり、迫力があり、けれども色彩が素晴らしく美しい。圧倒されてしまい、陳腐な感想しか言えない自分が全く恨めしい。三枚組の肖像画として恋人ジョージ・ダイアの作品も展示されていた。(実は一度、一般的にはタブーとされているベーコンのセクシャルな部分について、作品を観れば判るだろうと友人に論破されたことがある。彼の性癖や日常については、1998年の映画『愛の悪魔』を観るとよく分かる。)
今回は、単なる回顧展ではなく、「身体」に着目したテーマ展でもあるということで、土方巽のダンス映像も上映されていた。

*1:このことは、拙はてダにも一度書いている。(参照)